限りない日々の逃走劇

主にtacicaを褒め讃えるためのブログです

2023年を共に過ごしたアルバム

今年もあと僅かとなりました。皆さまお元気でしょうか。
私は寒さに凍えて布団に籠城する毎日を送っています。ほんと年々寒さに弱くなってる気がするなぁ。

それはさておき。
2023年は、個人的に新しいアーティストの音楽に触れた年でした。
今まで避けていたような流行りの曲も聴けて、好きなアーティストも増えて、音楽面では非常に充実した年になったなぁと振り返ってしみじみ思いますね。
私生活は、まぁ......アレですが。

話は少し変わりまして、日頃愛読させてもらっているブログの方が、その年にリリースされたアルバムをランキング形式で毎年紹介されているんですよね。

 

reza8823.hatenablog.com

 

映画や本についての丁寧な感想を毎日上げられている凄い方で、音楽の知識もとても広く、いつも羨望を募らせながら楽しく読ませてもらっております。
それに憧れて、よく聴いたアルバムとか曲についての感想を文章として残してみることにしました。
音楽の詳しさが雲泥の差なので、僕の方はランキングでもないし、今年リリース以外のアルバムもありますが、少しでも楽しい記事にできたらいいなと思っています。

では、どうぞ!(年末番組を意識した掛け声)

 

 

 

ヨルシカ 『幻燈』

 

私の2023年はヨルシカの年でした。
ギターの激しさ、詞の繊細さ、アルバムの作品性、どれをとっても大好き。
「思想犯」を初めて聴いた時に、好みのど真ん中すぎて(これはハマる)と確信したものです。
現にどハマりしまして、最新アルバム以外を猛スピードで聴き終えました。

それで『幻燈』が国内外含めた文学の名作をモチーフとした楽曲集だと知りまして。
新潮とのコラボ作品六作のうち一作を読み終わるごとに一曲聴くという、なんとも贅沢な聴き方をしたんですよね。これが今年一番の思い出かな。

 

華がない我が家の一角を彩る本たち

純粋に文学作品に触れること自体が新鮮だったし、その上でヨルシカの曲を聴くことで作品への解釈の仕方が見えてきたりと、相乗効果でより作品への理解度や思い入れが深まってとても良かったです。本当にいいコラボでしたね。
因みに、元ネタの中だと『老人と海』『アルジャーノンに花束を』『華氏451度』あたりがおすすめ。未読の方は是非。

で、『幻燈』というアルバム自体はどうなのかと言えば、それはそれは素晴らしい傑作でして。純粋に収録楽曲のクオリティがとても高いです。
『負け犬にアンコールはいらない』とか『だから僕は音楽を辞めた』あたりの攻撃的な作風が薄れて、純粋に音の美しさだったり、詩表現の文学性が磨かれているように感じます。
ここらへんは好みに寄りますが、僕は今の作風の方が好みですね。

甲乙つけがたいですが、あえて触れるなら「第一夜」かな。


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音が削ぎ落されていて、素朴な美しさだけが残されたような聴き心地。

朝目が覚めて歯を磨く

昼は何処かで夢うつつ

夜に花火を観ています

一日の些事一つ一つが、今は側にいない貴方に繋がり、切ない。
何度も繰り返される”貴方だけを憶えている”という言葉にも、その思いの深さが察せられて、やはり切ない。

それだけに、ふと貴方に気づく終わりが実に鮮やかで、胸に残ります。

やっと貴方に出会えた

そんな夢を見ました

ここのsuisさんの感極まって声が上擦るような歌い方もいいんですよね。
曲ごとに色を変えるsuisさんの表現力には、毎度驚かされます。

 

あと、画集の方にしか収録されていないんで貼れないけど、「パドドゥ」もとても好き。
n-bunaさんの書く詞は、情景描写が一貫して綺麗なんですよね。
「パドドゥ」はそれを突き詰めたような曲で、聴いていてうっとりします。

あと、ここのワンフレーズがお洒落すぎる。

僕ら芥川の小説みたいに

今だけの想い出になろう

”僕ら芥川の小説みたいに 今だけの想い出になろう”ですよ!
なんて瀟洒な言葉だこと。

ただ芥川の名を引用しているだけじゃ上滑りしそうなんだけど、元ネタである「舞踏会」の空気感をしっかり踏襲しているから、ここまでビシッと決まるんでしょうね。

俺も言ってみてぇよ、こんなセリフ。いや僕が言っても降り積もった黒歴史の山がより高くなるだけか。そもそも言う相手もいねぇわ。
危ない危ない、勘違いするところでした。
素敵な曲に入れ込むあまりに、自分が垢抜けていると錯覚してはいけません。自戒。

 

他の曲も一つ一つの存在感が大きくて、聴きごたえのある一枚(一冊?)でした。
また、画集アルバムという試みに対して賛否両論あるのは知っていますが、僕は肯定的です。
本を読み、絵を観て、音楽を聴く。
幾多の音楽をサブスクで聴けてしまう時代である現代に、これだけ根を張るようにしてじっくりと一つの作品を味わえたのは、とても良い体験だったなと思うし、『幻燈』は意義のあるチャレンジだなと。
まぁ、でもやっぱ不便さが悪目立ちする部分もあって、サブスクのありがたみが却って増した気もします。
便利なものに飼い慣らされていくのだなぁ.......人間は。

と、『幻燈』について偉そうに語りつつも、一番好きなアルバムは断トツで『盗作』なんですよね。
初回限定版の特典である小説も何とか新品で手に入れて、まだ読まずにとってあるので、それを踏まえた感想の記事も来年に書きたいなと思っています。

まぁその前に、『幻燈』の残りを書かねばならないのですが......。

 

 

ネクライトーキー 『ONE』

ONE!

ONE!

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今年2番目に聴いたのはネクライトーキーでした。
このバンドは一聴すれば分かる通り、超個性的です。

シンセはキュートで狂ってて、ギターはクソかっこよくて狂ってて、歌詞はしみったれた生活とトンチキな妄想を行ったり来たりして狂ってる。そしてボーカルもっささんの可愛らしい声が、コミカルな世界観と絶妙にマッチしている。
最高にイカレてイカしたバンドだぜ。

 

『ONE』はそのネクライトーキーの1stアルバムで、彼らの魅力が存分に詰まっています。

前半の楽曲はコミカルで弾むよう。
ネクライトーキーの”トーキー”な要素が強いですね。
かわいいうたを自称する曲(全然かわいくない)とか、金を借りてるだけの曲みたいなコミックバンド的な悪ふざけがたくさんあって、聴いてるだけで愉快な気分になれます。

極め付きが「オシャレ大作戦」です。
タイトルにすら阿保らしさが滲み出ていて、いいですよね。

 


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オーケストラヒットの頭おかしい使い方で、イヤでも笑ってしまいます。
間奏でドラムの人の名前を呼ぶところとか、無骨なギターの音色とか、実はかなりキツイことを言っている歌詞とか全部好き。
このバンド色は、コンポーザーであるギターの朝日さんによるものが大きいと思います。

ちょっと横道に逸れますと、この朝日さん、石風呂という名義でボカロPもやっています(今はほぼ活動してないけど)。
僕はその石風呂名義の楽曲が中学生くらいの頃からめちゃくちゃ好きでした。当時から根暗だったので、ハマるのも必然と言えます。
そんでネクライトーキーの存在も知ってはいたのですが、どうしてもそっちに思い入れが強かったので、遠ざけてしまってたんですよね。
そこから少し時が経ち、ふと聴いてみたこのアルバムがとても良くて、一気にお気に入りのバンドになりました。
また彼の作る曲にハマれたのも、今年の大きな収穫だったなと思います。

んなどうでもいい私情はさておいて。
後半の6曲は前半と打って変わって感傷的です。
ネクライトーキーの”クライ”要素ですね。

「がっかりされたくないな」とか歌詞がもうひたすら暗くて、聴いていて辛いっす。

逃げられやしない場所で

「お前は何もできない」と

わざわざ言われずとも自分が一番わかってるよ

ね?言ったでしょ。
この甚大な劣等感を抱えていて、駄目な自分がばれてがっかりされることに怯えている気持ちに、身に覚えがありすぎてねぇ......。
あー、やだやだ。

 

そんな辛すぎる曲の後に、「だけじゃないBABY」で少し、ほんの少しだけ前を向くのがグッときます。


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ギターの音がやさしいしリズムは軽快で、ふさぎ込んだ心がだんだん弾んでくる。
詞に目を向けると、「ちょっとは汚れてみな」とか「ちょっとは現実を見な」と、応援歌としては少し厳しめな言葉もあるけど、もっささんの朗らかな声で歌われると、なんか純粋に励まされる思いのみが残るんですよね。
この距離の近さというか、気の置けない友人みたいな雰囲気が、ネクライトーキーの一番の魅力なのかも。

ラスサビの最後の一言も、何年来の親友から言われるみたいな安心感すらある。

ちょっとは元気を出しな

ありがとな!、って聴いてて思わず返しそうになります笑。
いいバンドだねぇ。

 

すっかりネクライトーキーが生活に馴染んだので、来年2月に発売予定の『TORCH』も予約しちゃいました。

朝日さん曰く、一番かっこいいアルバムらしいのでめっちゃ楽しみですね。早期予約だったからランタンライトも付いてくるぜ😎。

あと『ONE』の感想の後編を半年以上ほっぽっているので書かなくては。
ほんとだらしねえブログですまないです......。年始は滝行にでも出て精神を鍛え直そうかしら(ブログ書け)。

 

 

米津玄師『YANKEE』

YANKEE(通常盤)

YANKEE(通常盤)

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はい、言わずも知れた超売れっ子の米津さんです。
今年もジブリやらFFやらジョージアのCMやらと引っ張りだこでしたね。
僕は「ゴーゴー幽霊船」の頃から知っていましたが(さらりとしたマウント)、ちゃんと聴きだしたのは去年の「KICK BACK」がリリースされたあたりから。

でもって『YANKEE』がめちゃくちゃ好きです。
収録楽曲が揃いも揃って強い。
「リビングデッド・ユース」で始まるのがまず最高だし、「メランコリーキッチン」は歌詞が素敵すぎるし、「しとど晴天大迷惑」みたいな半分悪ふざけのような曲も楽しすぎるし、「KARMA CITY」からの「ドーナツホール」でアルバムがビシッと終わるのも痺れる。
てか、名盤がすぎる。そら売れるわ。

楽曲集としても素晴らしいのですが、全体のテーマがより素晴らしくて。
別の記事で「WOODEEN DOLL」が生きづらさを抱える”あなた”へ優しく語り掛けていると書きました。それと同じように、後ろ暗い過去に苛まれ、周りと打ち解けられない今を生きている、そんな”呪い”で縛られる人間へのメッセージがそこかしこに込められていて、すごく好きなんですよね。

それが色濃いのは「リビングデッド・ユース」かな。

 


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そう 僕らは未だ

大人になれず

彷徨ってはまた間違って

わかりすぎる。
わかってしまうことが悲しすぎる。
そんな風にかなりリスナーと近い距離で、自分も日々の中で擦り切れていることを打ち明けながらも、曲全体では「なんとかやって行けるさ」と前向きなのがとても良い。

でもって、たった今、呪いを受けているようなティーンエイジャーに対しての姿勢がこれまた真摯なんですよ。

死球を見逃したアンパイア

どうせ公正じゃないのならば

僕はせめて味方でありたい

信じられないならそれでもいい

世の不公正さを訴えつつ、「僕はせめて味方でありたい」と言ってくれる。
その上で「信じられないならそれでもいい」としているのが、彼をアーティストとして強く信頼できるところ。
この気持ちが一方的であっても、何かを返してもらわなくてもいい。傲慢さの欠片もなく、ただ味方でありたいという思いだけがある。
この曲としての在り方に、救われる人は必ずいると、僕は思います。

明けぬ夜でも火を焚いて今

そんな そんな歌を歌う

 

そんな優しく、聴いている人が救われるような曲......ばかりでなく、後半でそれ自体を揶揄する、毒の塊のような曲が入ってくるのがひねくれ者って感じでこれまたいい。

あなたが思うほどあなたは悪くない

誰かのせいってこともきっとある

とか

どこにもないと泣く前にさ

目の前の僕をちゃんと見つめてよ

って歌っているような曲(WOODEN DOLL)と

 

お歌を歌えば人を騙し

また誰彼構わず慰める

ほら盲信者増やして傘下に置いて

孤独で遊説を

とか

ちゃんちゃらおかしな世の中だ

その平和と愛とをうたえども

心にあるのはそれではない

また僕らに自由はそれほどない

と吐き捨てる曲(百鬼夜行)が同じアルバムに収録されているのおかしいでしょ!
しかも盲信者と来たもんですよ。怖いもの知らずか。
世間への毒をまき散らし、自分を好いてくれるファンにも砂をかけ、そんでもって一番強く傷つけているのは自分自身。
やっぱヤベー奴だわ米津って。
でもその在り様は(正しい意味での)穿った見方の結果だと思うから、僕は好きなんですよね。

『YANKEE』の頃に比べ、幸せを讃えるようなラブソングを歌うことが増えた今の米津氏ですが、「POP SONG」の”全部くだらねえ”みたいなフレーズから尖り具合が維持されていることも垣間見えて、安心します。
そろそろ出るであろう次のアルバムにもその一面が少しでも覗けたら嬉しいなと、ラブソングに入り込めない僕は思います。

 

ここまで挙げてみて気づいたのですが、みんなボカロP出身の人がコンポーザーをやってますね。
個人的な話、僕はなんだかんだボカロキッズ世代で、熱心に追ってたほどじゃないけど、著名な曲は聴いていたりして馴染みがありました。現在そっちの界隈の人がバリバリ台頭してきているのは、なんか純粋にうれしいですね。

友だちから「米津玄師って知ってる?」と聞かれ、(知ってたらオタクと思われるやん)みたいな無意味な勘ぐりをして「誰それ?歌人?」と答えるような悲しき人類は、もういないんやね......(遠い目)。

 

 

ずっと真夜中でいいのに 『潜潜話』

 

知ってる方の多いであろう、ずとまよも今年になって本格的に聴き出しました。
ヨルシカで味を占めて所謂”夜行性”を追う形でハマった......訳ではなく、実は全く別口だし、ずとまよの方が先に聴いていたりします。そしてYOASOBIは多分聴かないです。
独特な世界観が癖になるアーティストですね。
今年の新譜もすごく良かったのですが、個人的により聴いたのは1stアルバムのこっちでした。

音の面では、ピアノや吹奏楽器がモリモリで、すっごいゴージャス。名前の通り、真夜中に半ばやけくそ気味に踊れる感じで楽しいですね。
煌びやかな音が華を添える中、ふとした時に耳に留まるベースが超カッコいい。ベースがいいアーティストはやっぱりいいな(通ぶりたい音楽ニワカ)。

で、歌詞は......まぁ、ほぼわかんないですね笑。
ニュアンスくらいはぼんやり掴める曲もあれば、徹頭徹尾何のことを言っているのか分からない曲も。
ただ、言語感覚が独特なので分からないなりにおもしろさが掴めるのがいいなって思います。

例えば「勘が冴えて悔しいわ」の終わり付近。

 


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いぇいいぇいいぇいって歌ってると思ったら、歌詞で

遺影遺詠遺影遺詠

遺影遺詠遺影死体

になっているのに気づいた時は笑いましたね。
でもただのユーモアってだけじゃなく、躁状態っぽいようなテンションの高さが伝わって、どことなく共感できちゃいます。
ここらへんの表現はSNSが発達して以後に台頭してきたアーティストって感じがして、新鮮味ある。

 

でもって、時折意味を掴める(そんな気になっているだけかもしれないが)ような歌詞もあって、そういう時にハッとさせられます。
「眩しいDNAだけ」の

犠牲にしたって本心だけ

誰もわからず乏しい罠

分類したって自尊心はもう

薄暗い朝に委ねるだけ

とかドキリとする。
大事なはずの自分の心をぞんざいに扱っちゃう感じ。わかるなー。

あと「正義」の歌詞も好き。

近づいて遠のいて 探り合ってみたんだ

近づいて遠のいて わかり合ってみたんだ

近づいて遠のいて 笑い合ってみたんだ

近づいて遠のいて 巡り会っていたんだ

このタイトルの曲で、”近づいて遠のいて”って歌うのがとてもいいなと。
正義って不確かなものだと私的に思っているから、ここがピッタリ正義だよってあり方でなく、右往左往する最中になんとなくあるんだろうなってスタンスなのがとても頷ける。
あと、”笑い合って”とあるのも素敵。
優しくて真面目な人間性が、ここの詞から伝わってくる気がします。

そんなこんなで、一番好きな曲は「ヒューマノイド」ですね。

 


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細かいドラムのリズムがゲーム音楽っぽくて盛り上がる。
終盤のボス戦で流れてめっちゃテンション上がるのが容易に思い浮かびます。

でもって歌詞はSFチック。
全体的に人間を敢えて機械のように捉えていて。
そのことにより、倫理観が揺らいできます。

こんな気持ちだけ 名前があるだけ

手を握るたび プログラムだってこと?

こことかは、異性と手を握るとドキドキするっていうロマンチックな感情を、生物が種を保存するために初めから仕組まれた”プログラム”として捉えているんじゃないかな。
誰かと恋に落ちるのだって極論、子孫を残すための錯誤であって、台本じみた本能を僕らは無意識化に辿っている。
そう考えると、なんかゾクゾクしてきません?

あとCメロの詞がとても好きですね。

言い切れること 1つもいらないよ

偽物さえも その見解も 誰が決めることでもないよ

勝ち負けが白黒が人間が

人間じゃないかなんてもう 正しさは無くて

儚い傷も抱きしめよう 目を瞑ろう

今日を終わらせるために

SF的な考え方により、様々な倫理観の曖昧さを訴えた後で、”儚い傷も抱きしめよう”と歌っているのがジーンときます。
人間と非人間の境界がぼやけたことで、却って人間らしさが残る。
ここらの聴き心地は、SF小説の個人的に好きな部分と重なって、大変良き。

ヨルシカの「レプリカント」も似たような理由で大好きなんですよね。
同じ感じの曲があったら是非教えてほしいです。お礼は弾むぜ。

 

一見意味不明だったり、ふざけているようにすら時折感じるずとまよの歌詞。だけど等身大の心で凄い真剣に思いを伝えようとしている。ACAねさんの必死な歌声を聴いていると、何となくそんな気がしてきます。

あと、初めて聴いて何を言っているか全部分かってしまうような歌詞よりかは、何言っているか全然分からないような歌詞の方が、何回も聴いて咀嚼できた時の喜びがあるので好きですね。
なのでこれからもずとまよさんの曲をあたりめのように噛み続けたいと思います。

 

ASIAN KUNG-FU GENERATION『サーフブンガクカマクラ(完全版)』

いぇーい、我らがアジカンです。
今年も元気に新譜を出してくれて助かります。

このアルバムは2008年にリリースされた『サーフブンガクカマクラ』の完全版ということで、江ノ電の停車駅をモチーフにした曲のみで構成されています。
純粋な新曲は前回ハブ......、入らなかった5駅にあたる5曲ですね。

そういう経緯で、大半は再録の曲です。
しかし、侮るなかれ。全体通してかなりパワーアップしています。
何がいいかって、凄く今のアジカンに馴染んでいるんですよね。
どっしりとしたリズム隊に、余裕を感じさせるギター、そこにゴッチの安定した歌声が乗って最高にリラックスできる。
ガツガツと活動していたあの頃と異なり(当時を知らないけど)、良い意味で落ち着いた逸品に仕上がっています。

あと、聴いた人はみんな思うだろうけど、「七里ガ浜スカイウォーク」の歌詞改変、めちゃいいっすよね。

海辺のファーストキッチン

絶え間ない談笑に

だったところが、もうファーストキッチンが閉店してしまったので

海辺のファーストキッチン

今はない談笑に

に変わっている。
15年という時間による移ろいが反映されていて、哀愁を感じます。流石の表現力。
まぁその前の”その影はエイだね”が”それエイの魚影だね”に変わっているのかは、何でかさっぱり分からないのですが。
どっちも同じじゃないですか!?

 

新曲だと「日坂ダウンヒル」と「和田塚ワンダーズ」が好きですね。
両曲とも今のアジカンであること、そして今のゴッチが歌うことに意味があるような気がします。

「日坂ダウンヒル」はスラムダンクのOPのワンシーンにも使われている、鎌倉高校前駅(旧名日坂駅)が舞台。
なのでそこかしこにオマージュ的なフレーズがありますね。
特にここなんかモロで笑っちゃう。

諦めたらそこで試合は終了

それなら4試合は軽く終わってる

現実的な話、諦めても人生は続くもんなぁ笑。

そんなユーモアを交えつつ、内容はかなりくたびれた感じ。
四半世紀を越えて続けてきたバンドである彼らが下り坂の名を冠した曲で”坂道を上まで登り切って 肩で息してる”と歌う、その繕わなさがアジカンらしくて、僕の目にはカッコよく映ります。

そして曲の終わり方も、やはりアジカンらしい力強さで、やっぱ好きだなぁと。

あの日見た景色や仕草を糧に今

歩き出す

もう一度

この曲がアルバムの真ん中に来ていることも、次の曲が七里ガ浜スカイ”ウォーク”であることも含めて完璧です。
まさに完全版の趣。

 

「和田塚ワンダーズ」も歌詞がとにかく良い。
始まりの”派手に泣いて良いぜ それはだって命の在処だよ”の時点でウルっときてしまいます。
いつか湘南で過ごした思い出の日々も遠くになって、街は様変わりし人は老けていってしまう。

そんな諸行無常を描きつつ、”それでもさ”と続くサビが心に沁みます。

どうか海へ 投げ捨てないで

笑って過ごした あの日々を

駐車場を探し回って

疲れてしまった あの頃を

今日という愛しい日も

もう二度と会えないでしょう

いやー本当にいいよね、ここ。
二度とあの頃に戻れないというどうしようもない切なさがあって、だけどそれ自体がどうしようもなく美しくて。
得も言えぬ素晴らしい詞ですよね。
ゴッチが自分で作ってて泣いちゃったのも分かる。


クオリティはもちろん、今のアジカンがリリースすることに強い意義のある、傑作アルバムでした。
ありがとう、パワーポップおじさん!

 

 

tacica 『YUGE』

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最後は最愛のロックバンド、tacicaのニューミニアルバムですね。
tacicaの曲はいつでも最高ですが、今回もご多分に漏れず、素晴らしい一枚でした。

コロナという特異点を機に、大きな変化を遂げたtacica
今回のアルバムはそのネクストステップに相応しく、バンドとしての裾野をさらに広げています。
おそらくウクライナ侵攻を受けて改めて死と生を歌う「ディスコード」、コーラスも入らない初の完全インスト曲「遊戯」、コーラスで森田くみこさんが参加し何時になくキュートな「ナニユエ」。
旧来のtacicaにはなかった要素を積極的に取り入れつつ、しかししっかりとtacicaの曲に落とし込まれていて安心感もあります。
やはり彼らはどこまでいってもtacicaなのだろう。

そんな本作のお気に入りは「荒野を行く」と「ぼくら」ですね。


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「荒野を行く」は歌詞が良すぎる。
いや、tacicaの歌詞が良いのは太陽が東から昇るくらい自明の理だから、今更言い立てる必要もないのだけれど、それにしたってこれだけ刺さる詞を書かれたら黙ってはいられません。

”悲しい事があったらさ”と嘆くように始まり、人間の在り方について”僕”の価値観から答えを探すのが一番の歌詞です。
それに対し、二番では不特定多数の”我等”に主眼が移る。この対比が巧い。
誰かを傷つける為に忙しなく、五月蠅い口たちが開かれる場は、おそらくばSNSを指しているでしょう。
強い悪意や呪詛が、探すまでもなく目に付いてしまう現代。四六時中、義憤か嫉妬か或いは別の何かに駆られた人間が、その言葉の鋭利さも顧みることもせずに、簡単に振りかざしている。画面の向こうの体温さえ感じられずに。
僕はもう正直、SNSのそういう面には倦んでますね。
憂えたって嘆いたって変わんねぇんだけど。

そんな風に珍しく風刺的に世間を捉えつつも、”赤い血の温度 確かめてみて”と、tacicaの頻出単語である赤い血により、各人の心へ訴えているのが素晴らしいところ。

また、”我等”というとても広い主語で歌われるサビは、まさに今を生きる人間とその社会を言い表していて、好きなんですよね。

我等 思い思いの物差しで測る大都会

その群れと高層ビルの立てる音の中に

どんな心無い言葉 楽になれないのはどうして?

僕はここにいる

もうホントそうだよなぁ......。
みんな”思い思いの物差し”で物事を測っているし、その集まりの”心無い言葉”が生む不協和音は聞くに堪えないし、楽になれないのはどうしてなんだよ......!
”僕はここにいる”は呆然と立ち尽くすようにも、自分の存在を確かめるようにも聞こえます。
でもやっぱり、人の世の悲しみを嘆いて終わるのではなく、少しの希望を見出してくれるところが、tacicaへの信頼が揺るがない理由なんですね。

雨上がり虹色の上で踊り疲れても

明日からも僕なのさ

思い知らせて 眠れるまで

 


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「ぼくら」はアルバムのラストトラック。
この曲、なんと珍しいことに出てくる楽器がギターとベース(と一部シェイカー)のみ。
ほぼ弾き語りなんだけど、小西さんのベースが入る事で、一気に厚みが増しています。
ボーカルが入る箇所は歌声を引き立てて、間奏とかだとベースが結構前に出てくるのが良い。特にアウトロ付近のベースのリフがtacicaだなぁって思い、バンドにおける小西さんの存在の大きさが改めて感じられます(もちろん、中畑さんもほぼメンバーなくらい大事な方だけどね)。
猪狩さんと小西さん二人の横並び感が強く出ていて、あんま好きな言葉じゃないから言いたくないけど、やっぱエモいですね。

歌詞は出だしのインパクトに引っ張られつつ、「どうしようもないけど行こうぜ」ってシンプルなメッセ―ジにほっとします。

眠れない夜から今日までを耐え抜いて

どこまで ぼくらは行ける?

それしか 方法はない 途方もない

じゃあ仕様がない 仕様もない脳内で

ぼくら ぼくら

この懐の広い”ぼくら”がいいよなー。
日々に削られつつも、こうして音楽を続けるtacicaが好きだし、これからも彼らの音楽と共に生きていくのだろうな。

 

って感じで、ミニアルバムというサイズ感ながら、彼らの今の開けた音楽性と、変わらない良さを感じられる作品でした。
他の作品に比べ、かなり聴きやすいと思うので、入門にもおススメです。
てか、聴いて。

なにやら来年にアルバムが出ることを匂わせているので、今からワクワクしてます。
多分今日の24時(=元日の0時)に何らかの発表があるはず......楽しみでニヤニヤが止まらん。

追記:1stミニアルバムと1stアルバムの再現ツアーの発表でした
   ......それはそれで嬉しすぎるぜ。

 

 

tacicaアジカンに続き、三大好きなバンドだったサカナクションもリアレンジアルバムをリリースしていた......のですがあんまり聴かなかったですね。
やっぱ『アプライ』を出してほしいというのが正直な心境。
山口一郎氏の健康面を考えると、まぁしゃあないか......とはなります。健康第一だし、より細くより長く生きてほしいし。
でもせめて「SORATO」は早く音源で出してくれよな!

 

アルバム単位でハマったアーティストは以上で終わりです。
ここからは、趣旨とは異なってしまうのですが、いくつか曲を聴いて(ちょっといいかも......)と気になってきている方々をちょっと挙げておこうかと。
来年に向けた唾つけですね(この慣用句、汚いよね)。

では、どうぞ!(年末番組を意識した掛け声(2回目))

 

日食なつこ


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度々名前を目にするので気になっていたお方。
聴いてみたらクッソカッコよくて一瞬で惹かれました。
ピアノってその音色の綺麗さが先行しがちだけど、力強くて熱さもありますよね。
ギターがなくてもばっちりロックになっているのも凄い。
ただただカッケぇ。

アルバムはまだ聴いていないのですが、絶対良いものなのだろうなという確信があります。
今から聴くのが楽しみですね。

 

SAKANAMON


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こちらはかなり長く活動されているロックバンド。
ぼっちざろっくの作中バンドである、結束バンドに今年楽曲を提供をしていて、そこでSAKANAMONの存在を知りました。
そこに重ねて、いつも読んでるブログの方がいくつか曲を紹介されていて、現在ハマりかけています。

hirahira-ki.hatenablog.com

ギターの音がロック聴いているなぁって感じで気持ちいいし、若干ひねくれ気味の歌詞が面白い。
この曲もネクトンだとかストレインとかよう分からん用語でリスナーをふるいに掛けつつ、「たとえそれが生態系におけるプランクトンくらいの価値だとしても、自分たちの好きな音楽をやっていくぞ」という決心を感じて好きですね。

「聴く人の生活の肴になるような音楽を作りたい」っていうバンド名の由来も素敵だし、是非深堀りして聴いてみたいです。

 

King Gnu


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クソ周回遅れですが、今の世を席巻しているKing Gnuの曲も何曲か聴きました。
めっちゃカッケぇですねこのバンド。
サイケな電子音とゴリッゴリのバンドサウンドでオリジナリティがやべぇ。メインボーカルである井口さんもとにかく美声で、あらゆる面で死角がない。
売れるのも納得しかないです。

あと曲関係ないけど、youtubeのオススメで流れてきたインタビュー動画で声出して笑いました。
なんであそこまで迫真の声で「僕ママの焼いたクッキーが食べたい」と言えるのか。
そして地獄のような空気感に負けず「僕ママの焼いたパンケーキが食べたい」と続けられるのか。
訳は分からんが凄い人だ。

 

タニタツヤ


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今年で知名度が爆発したキタニタツヤさんですね。
今日の紅白にも出演するとか。

この曲は、サポートメンバーのよしみもあるヨルシカのsuisさんとのコラボ曲。
ぴかぴかやふかふかといった擬音が可愛らしく、名前の通り夜寝る前に聴くとほっと一息付けて、非常に健康によろしい。

僕が以前から好きだったモブサイコという作品の主題歌を作っていたり(「グレイ」の歌詞が最高なんですよ)、アジカン好きを公言していたりと(ライブで「バタフライ」をやるあたりがガチすぎる)、何かと繋がりを感じて興味が湧いております。

彼は動画配信もやっているみたいで、その切り抜きを最近いくつか見ました。
何と言うか、エキセントリックな方ですね。

......天才ってみんな変人なのかな?

 

 

他のアーティストで言うとは相対性理論の課題をこなしながら相対性理論を聴くという念願を叶えられたのが良かったです。
より脳内が混沌としただけだったけど。
なんやねんテンソルって。”熱海に着いちゃったテレポーテーションで”ってどんな歌詞だよ。

 


アルバム以外に聴いていた曲はそんな感じでした。
最後にspotifyの一年のまとめでも貼っときましょうか。

うん、ヨルシカの圧勝です。
最初見た時、予想通りすぎて笑いました。
いや~、ハマったなぁ。

ネクライトーキーはともかく、去年まで名前を聞いたことあるくらいだったヨルシカにここまでどっぷり浸かることになるとは、全く予想外でした。

来年は何にハマるかなぁ。
楽しみですね。

 

はい、僕の2023年の誰得音楽ライフ報告は以上となります。
なんかグダグダと書いてたらクソ長い記事になってしまいました。
毎度のことだけど、読んでくれる人がいる気がしない。
声でもかけてみますか。 おーい!見てるかーい?
今年はこんな感じでしたが、来年はまぁ、もう少し簡潔に文章をまとめられるようになれたらいいですね。

では、こんなしがない文章を読んでくれた方の2024年が幸せなものとなるよう祈って、終わりとしましょうか。

みなさん、良いお年をお迎えください。