限りない日々の逃走劇

主にtacicaを褒め讃えるためのブログです

tacicaを聴いてくれ! 【フルアルバム編】

tacicaは札幌で結成され、今年で17周年を迎えるロックバンドです。
NARUTO」や「宇宙兄弟」、「ハイキュー!!」などのアニメ主題歌でご存じの方もいるかもしれません。

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ボーカル・猪狩氏のクセのない綺麗な歌声と、抽象的な歌詞が特徴的ですね。小西さんのベースもいいぞ。

先日、tacicaのベストアルバム"dear,deer"がリリースされました。

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初期の葛藤するような暗い曲から、ポップなタイアップ曲、そして雄大さを感じさせる曲まで幅広く収録されていて、これからtacicaを聴くという人にはうってつけの一枚だと思います。

しかし一枚だけではtacicaの魅力は伝わりきらない!というのもベストに収録されているのはほとんどシングル曲なんです。もちろんそれが悪いわけじゃないんだけどtacicaの強みはアルバムやカップリングの曲も、シングル曲に引けを取らない名曲ぞろいというところにあると勝手に思っています。
それに加えアルバムを通しての仕掛けやテーマがあるのでできればアルバム単位で聴いてほしい!後生ですから!

そんな思いを込め、tacicaのおすすめアルバムを紹介したいと思います。

入門するならこの3枚

先ほど書いた通り、ベストは入門に最適です。その次なる一歩としても、tacica入門としてもおすすめなのが以下の3枚のアルバムです。

panta rhei

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tacica最新にして現時点での最高傑作がこのアルバムだと思います。

"panta rhei"はギリシャ語で『万物流転』という意味。
スローテンポからアップテンポまで幅広く収録されており、ドラムの打ち込みやポエトリーディング等、バンドとして初の試みも多いのでその名の通りバラエティ豊かな一枚になっています。
tacicaのアルバムは毎回捨て曲がない(主観)のですがパンタレイはそれが極まっています。もうとにかく粒ぞろい。そのためベストに収録されている「煌々」や「ordinary day」が突出せず、アルバムの中にしっかりと溶け込んでいるんですよ。バラエティ豊富な上に粒ぞろいともなればもはや無敵でしょう!

ボーカル・ギターの猪狩さんが書く詞は抽象的で、それ故に何のことを歌っているのか分からない時が多々あります。しかしこのアルバムではメッセージの具体性が増しているので、歌詞を受け入れやすいと思います。
例えばラストトラック「latersong」のサビの

無い知恵振り絞って行け

とか4曲目「name」の

必ず雲間に朝日が射すさ

なんかはすごくストレートですね。
tacicaの歌詞の良さやメロディの良さがまっすぐ伝わる、入門にうってつけの一枚です。

まぁ「wonder river」みたいな難解な曲もあるけど

 

オススメ曲

「刹那」...カッケェ!ゴリゴリのロックって感じ。ライブ版も超カッコいい

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口から音源か?
「中央線」...アコギと歌声が染み入る一曲。中央線が遅れるということは......
Lynx」...初期を彷彿とさせる、疾走感あふれる動物曲。Lynxは山猫のこと
「latersong」...歌詞がめっちゃいい。心地よい余韻が残るラスト曲

 

LOCUS

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10周年にリリースされた、集大成と新たな始まりを感じさせる5thアルバム。

タイアップ曲の「LEO」と「HALO」が入っていて、キャッチーな面が目立つ一方
「馬の眼」や「oops!!」など、tacicaの全曲の中でも一二を争う程難解な歌詞の曲も入っていて、tacicaの表と裏、両側面を味わえます。

10周年記念ライブの名を冠した「烏兎」は、月日の重みを感じさせるエモーショナルな名曲。Bメロの歌詞の変化がとてもいいので抜粋してみます。

一番と

今以上を愛す事の繰り返しで
あの頃が良かったなんて笑うけど

二番で

今をもっと愛せる日を待ち望んで
あの頃へ戻りたいと泣くのでしょう

回顧していたのが三番で

今をもっと愛せる迄立ち向かって
あの頃と同じように笑うでしょう

前を向く詞に変わる。
悩み抜くからこそ見えてくる希望がtacicaの歌にはあります。

 

オススメ曲

「LUCKY」...まさにラッキー!って感じのアッパーソング
「烏兎」...15周年ライブの1曲目がこの曲だった。僕は泣いた
「oops!!」...暗い暗すぎる。だがこの暗さが最後のカタルシスに繋がる
「HELLO FAME」...映画のエンディングの様な大団円感。アウトロのベースが痺れる

 

HOMELAND 11blues

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ファン人気が高い[要出典]のがこの4thアルバムHOMELAND。リリースから半年後にドラムの坂井さんが脱退することもあってか、ロックバンド色の濃い曲が多いです。

1曲目の「barefoot」と7曲目の「bearfoot」は同じメロディーなんだけど「barefoot」はアコギのみでの演奏、「bearfoot」はバンド編成での演奏で、雰囲気ががらりと変わります。歌詞も対になっていて、アルバムへのこだわりを感じますね。

blue(憂鬱)というだけあって全体的に明るくはないです。しかし、アルバムを通して偽りなく葛藤を描いているからこそ最後の「DAN」が強く心に響きます。
何度も聴きこみたくなる名盤です。

 

オススメ曲

「vase」...音といい詞といいひたむきな一曲。タイトルが秀逸
「Co.star」...超かっこいい(小並感)。MVもかっこいいのでご覧あれ

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なんでベストに入んなかったんだこれ?
「From the Gekko」...静かに盛り上がる感じが堪らない!夜の散歩に最適
「DAN」...名曲。懊悩の果てにたどり着く決意を是非聴き遂げてほしい

 

正直この3枚で紹介を終えようと思ってたんですけど、ここまできたら7枚全部なきゃ失礼(誰に?)だし残り4枚も書くぜ!

 

深く嵌る4枚

次から紹介するアルバムは入門には少し向かない要素も含んでいるので、上の3枚の内どれかを聴いてから手を付けるのがおすすめです。しかしながらどれも良曲揃いのアルバムだから臆することなく聴いてみてください。

jacaranda

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猪狩さんの書く詞は生と死をテーマにすることが多いのですがこのハカランダでは死の方を突き詰めています。そのため1~11曲目までもれなく暗いです。

しかし暗いというだけで敬遠してしまうにはもったいない!代表曲の「人鳥哀歌」は言うまでもなく、激しい演奏で創作への苦悩を描く「アトリエ」、張り上げるような歌い方が胸を打つ「ジャッカロープ」と思いのこもった名曲ぞろいです。

個人的な解釈なのですが、ハカランダは後半の曲になるにつれて死の色が濃くなっているように思えます。序盤で他者との関わりや自分の可能性をメインにしていたのが終わりに近づくにつれて死を思わせる言葉が増え、そして最後の「γ」で......。

アルバム一枚で一つの作品と呼ぶに相応しい傑作です。

 

オススメ曲

20日鼠とエンドロール」...民族音楽チックな1曲目。γから戻ると印象変わるかも
「アトリエ」...葛藤に満ちた、ハカランダらしい一曲
「某鬣犬」...鬣犬(ハイエナ)が主人公。ギターのカッティングがかっこいい
「γ」...極限の自己対話。悲しい歌ばかりのアルバムの最後で

何故 僕等 哀しい歌 歌う

と問うのがtacicaらしい。その答えは......

HEAD ROOMS

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10周年を経て、バンドの見通しが良くなったと感じる6thアルバム。特色は何といってもアップテンポ重視というところ。
というのも、ハイキューのEDに再度起用されることになったため、それ用に5曲ほど作ったらしいです。そのためテンポが速くキャッチ―な曲が多く収録されてます。
「発熱」が気に入ったハイキューファンの方にはかなりおすすめです。

アルバムとしては「go by」と「NWM」の関係が鍵ですかね。"go by"には通り過ぎるという意味があるのですが、アルバム全体で青年期の経過を表現しているのかなと個人的には思います。軽快なリズムと裏腹な苦悩に満ちた「夜明け前」から「サイロ」までの9曲。それらを通り過ぎた末の"NO WHERE MAN"。
ポップだけどスルメな、実にtacicaらしい一枚です。

オススメ曲

「咆哮の詩」...詞がキレッキレ。特に以下の箇所。三拍子にビシバシはまる

今更嫌いでも好きでもない顔で

泣いたり笑ったりをするしかない

フラクタル」...リズムが心地いい。隠れた名曲
「サイロ」...イントロの突然始まる感じが好き。列車に乗りながら聞きたい

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デジタルリリースシングル曲でMVもある。何故ベストに入らなかった
「NWM」...夏を持って冬に向かう。フェードアウトが似合う切ない一曲

 

sheeptown ALASCA

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HEAD ROOMSがアップテンポ重視なのに対し、このアルバムはミドルやスローテンポの曲が多いです。いろんなテンポの曲を聴いてほしいと思ったので後回しになりましたが、シープタウンももちろんおすすめ。

2ndのハカランダでは死にフォーカスが当たっていました。その続編とも言える3rdアルバムのシープタウンは、死を踏まえたうえでの生がテーマになっていると思います。そのため曲調も安らぐような、温かいものが多いです。
注目は1~3曲目までの三部作。どれも聴き手の心をとらえる名曲です。MVも素晴らしいので是非見てください。

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ドラムの坂井さんが病気を患い、バンド活動の一時休止を乗り越えて作られた、tacicaを語る上で欠かせないアルバムでしょう。

オススメ曲

「不死身のうた」...重々しい前半からの疾走感ある展開が気持ちいい!
「ハイライト」...痛みが和らぐ優しい一曲。ベストに選出されたのも納得の名曲
アリゲーター」...思い出に囚われる心をワニの生態に重ねた曲。完成度が高い
「掟と礎」...心地いいイントロから、覚悟を決めるような歌い出し

もう雨の日や風の日を怯えて生きる事は止めにしたんだ

parallel park

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tacicaの原点というべき1stアルバム。なぜ一番最後なのかをぶっちゃけると、この頃の猪狩さんの歌い方や声質がBUMPの藤原さんに似ているんですよね。なのでパラレルパークから入ると「バンプじゃん」と偏見を持つ懸念がある。一方、2ndのハカランダ以降は猪狩さんの歌い方も変わり、確かなtacicaらしさがあります。なのでこのアルバムはできれば2nd以降のアルバムを聴いてからにしてほしい。

そんな余計なお世話はさておき、このアルバムの聴き所は何と言っても動物曲ですね。ヌーにカラス、サカナ、バク、カエルと動物尽くし。
tacicaの動物曲は一貫して、タイトルの動物の視点で描かれています。ただ、それらは全て暗喩で、猪狩さんの思いが反映されている......ような気がする。
難解で不確かな世界観を、スリーピースの確かな音で鳴らす。初期tacicaの魅力に満ちた一枚です。

「人間1/2」...バラバラな思いが激しくぶつかる。ライブ版の間奏が超カッコいい
「サカナヒコウ」...清涼感のあるスローテンポ曲。サビのシャウトが綺麗
「バク」...あんま話題にならないけど滅茶苦茶完成度が高い。夢食うバクの物語
「アースコード」...平行な物語たちをまとめる、雄大なエンディング曲

 

長々と書いてしまいましたが言いたいことはtacicaはいいバンドだから聴いてね!という一言に集約されます。panta rheiから入るのがおすすめです。

この記事でtacicaを聴く方が一人でも増えたなら幸いです。
また会おう dear, deer